2004年 11月 28日
「横濱写真館」にて-BankART 1929の活動- |
2004年11月7日の記事でもお伝えしたように、そちらに引き続き、再度BankARTについて紹介します。
今回は、こちらで開催する展覧会の魅力とその魅力の秘訣をお伝えするため、先日まで開催されていた「横濱写真館」という企画展の様子と、その企画者でBankARTの副代表、池田修さんに伺った話をお伝えします。
BankARTには、以前何度か訪れたことがありますが、2棟のうちBankART1929 馬車道(旧富士銀行)の内装は、その外観に劣らない1900年代前半のモダンな雰囲気を残しつつ、重厚な歴史の重みが漂うなんとも言えないもので、個人的にもかなりお気に入りの場所でした。しかも、今回出展した写真家の作品を他の場所で目にする機会も多く、それらを大好きな空間で見ることができること自体、大変楽しみでした。ただ、ちょっとした不安としては、作品も空間も共に個性が強いように感じたこと。もしかしたらその個性がぶつかり合ってしまわないだろうかと、期待と不安が入り交じった気持ちで会場に足を運びました。
しかし、実際に訪れてみると、先ほどの心配を吹き飛ばすほど全体がしっくりとした展示になっていて驚かされてしまいました。BankART1929 馬車道に限らず、BankART1929 Yokohamaの建物の中でも、作品はそれぞれの場所に一体化しているようで、とても心地よい空間でした。
では、その展示の秘訣を池田さんにお聞きする前に、今回、この展覧会を開催したきっかけを伺いました。
その理由は大きく二つあるとのことで、まず、一つ目は2棟あるBankARTのうち、旧富士銀行の方が2005年4月から東京芸大大学院の校舎になると決定されたことです。引き渡す前に、この歴史的建物の魅力を少しでも多くの人に見てもらいたいと思い、そのためには、建築(都市)との距離感、様々な意味でのスピード感、視線のラディカルさにおいても、写真という装置を使うしかないだろうということで、写真の力をお借りすることにしたそうです。
また、二つ目の理由として、横浜は写真発祥の地にも関わらず、この街をベースに仕事をする若い写真家が少なく、写真というメディアを使った発信ができていないと感じたことだそうです。そして、第一線で活躍する10名の写真家へBankARTから出展をお願いし、残り9名をお願いした作家たちによって推薦して頂いたとのこと。多様な視点の交錯、そして新しい芽への応援ともなったこの展覧会は、BankARTが目指している方向性の一つとも重なりました。
そして、いよいよ本題の魅力ある展覧会についてですが、実は作品の展示場所、方法は作家自身に決めてもらい、BankARTは基本的にそのお手伝いをしただけとのことでした。
しかし、その“お手伝い”が結構大変で、特異な空間ならではの素敵な演出ができる分、リスクも大きいようでした。二階からすぐ一階をのぞける、手すりの付いた幅の狭い廊下の壁面に展示された秋山由樹さんの作品(左画像)もその一つでしたが、努力の甲斐あり、なんとか展示できたとのことです。しかも、その狭い廊下で作品を見ることができるようにもしたため、鑑賞者は作品を臨場感たっぷりで見ることができた上、そこから一階に展示されていた作品やBankART全体をぐるりと見おろすことができるようになっていたので、新鮮で楽しかったのではないかと思われました。
また、その他の作家の細かい演出の注文にもBankARTは精一杯応えたそうです。例えば、照明一つをとっても手を抜いていません。宮本隆司さんの旧金庫室に展示した作品(左下画像)においては、その空間と作品が調和するよう照明をすべて取り替えたとのこと。そして、石内都(右下画像)さんの作品においても本来なら3本セットで順々についてる蛍光灯をすべて一本ずつにしたそうです。


一方、Bank ART1929 Yokohamaの内装は新しく綺麗ですが、こちらも地下から3階まで、そして 階段壁面などそれぞれの空間に合うような形で作品が展示されていました。
その一階にて「横濱モボ・モガを探せ! 」というプロジェクトによって集められた写真の展示も行われていました。このプロジェクトは1920年代から戦前まで横浜に数多くいたモボ(モダンボーイ)、モガ(モダンガール)を探すもので、2004年9月中旬からBankART1929の事業に関わってきた方や近隣の商店街にチラシを配りよびかけをはじめ、当時の写真を集め、将来的には一冊の写真集にする予定だそうです。しかし、このプロジェクトの真の目的は、未知の写真を手がかりに今現在の横浜を形成している人と街と出会い、新しいネットワークを築いていくことで、これからも活動は続きます。
また、今回の展覧会が成功した秘訣の一つとして、すべての額装をギャラリーパストレイズ
に担当してもらい、その分、出品作品の販売権をそちらに委譲し、BankARTの経費と手間を大きく軽減できたこともあげられるそうです。
以上のことは「横濱写真館」の裏事情のごく一部と言えるでしょうが、それだけでもこの企画展が、特異性の高い場所で個性が強い複数の作品を展示したにも関わらず、お互いの良さを引き出すよう、いかに工夫された展覧会だったかお分かり頂けたでしょうか。
そして、今後このような企画展が開催されたら是非見に行きたいと思われた方も多いかと思いますが、残念ながら、やはり企画展に関しては大きな経費と労力を要するので、運営のため全体活動の2割程度しかできないようです。しかし、その分、一般の方でも借りて利用することが可能なので、見るだけでなく、利用する側としても楽しむことができます。
取材全体を通して、作品とBankARTの特性を活かした魅力ある展覧会にするために、作家とBankARTが一丸となってその見せ方を試行錯誤し、普通なら諦めてしまう案でも実現させてしまった熱意と努力に何より感心してしまいました。
2005年1月より旧富士銀行から日本郵船の倉庫がBankARTの一棟になりますが、そちらはまた別の特徴があるので、その良さを最大限に生かした使い方をされるだろう、と今から確信と同時に心より楽しみにしております。
池田さん、お忙しいなか、ありがとうございました。
年中フルタイムでパワフルに動いている姿に脱帽です!(ドイ)


(左上画像がBankART 1929 Yokohamaで右上画像がBankART 1929 馬車道)
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「横濱写真館」
会期:2004年10月26日−11月10日
会場:BankART 1929
(BankART 1929 Yokohama+BankART 1929 馬車道)
出展作家:石内都、宮本隆司、小山穂太郎、田中サトシ、秋山由樹、笹岡啓子、安楽寺えみ、鈴木理策、山崎博、今井智己、北島敬三、綿谷修、楢橋朝子、蔵真墨、森日出夫、佐藤時啓、横湯久美、森山大道、市川美幸
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☆次回は、12月4日にBankARTで開催される多摩美術大学芸術学科建畠ゼミのシンポジウム「横浜国際会議2004-なぜ国際展か? -」についてのレポートの報告をしようと思います。こちらには、横浜トリエンナーレ2005のディレクターの磯崎新さんもいらっしゃるので、お楽しみに!
勿論、皆さんも参加できますので、興味のある方はコチラをご覧下さい。
今回は、こちらで開催する展覧会の魅力とその魅力の秘訣をお伝えするため、先日まで開催されていた「横濱写真館」という企画展の様子と、その企画者でBankARTの副代表、池田修さんに伺った話をお伝えします。
BankARTには、以前何度か訪れたことがありますが、2棟のうちBankART1929 馬車道(旧富士銀行)の内装は、その外観に劣らない1900年代前半のモダンな雰囲気を残しつつ、重厚な歴史の重みが漂うなんとも言えないもので、個人的にもかなりお気に入りの場所でした。しかも、今回出展した写真家の作品を他の場所で目にする機会も多く、それらを大好きな空間で見ることができること自体、大変楽しみでした。ただ、ちょっとした不安としては、作品も空間も共に個性が強いように感じたこと。もしかしたらその個性がぶつかり合ってしまわないだろうかと、期待と不安が入り交じった気持ちで会場に足を運びました。
しかし、実際に訪れてみると、先ほどの心配を吹き飛ばすほど全体がしっくりとした展示になっていて驚かされてしまいました。BankART1929 馬車道に限らず、BankART1929 Yokohamaの建物の中でも、作品はそれぞれの場所に一体化しているようで、とても心地よい空間でした。
では、その展示の秘訣を池田さんにお聞きする前に、今回、この展覧会を開催したきっかけを伺いました。
その理由は大きく二つあるとのことで、まず、一つ目は2棟あるBankARTのうち、旧富士銀行の方が2005年4月から東京芸大大学院の校舎になると決定されたことです。引き渡す前に、この歴史的建物の魅力を少しでも多くの人に見てもらいたいと思い、そのためには、建築(都市)との距離感、様々な意味でのスピード感、視線のラディカルさにおいても、写真という装置を使うしかないだろうということで、写真の力をお借りすることにしたそうです。
また、二つ目の理由として、横浜は写真発祥の地にも関わらず、この街をベースに仕事をする若い写真家が少なく、写真というメディアを使った発信ができていないと感じたことだそうです。そして、第一線で活躍する10名の写真家へBankARTから出展をお願いし、残り9名をお願いした作家たちによって推薦して頂いたとのこと。多様な視点の交錯、そして新しい芽への応援ともなったこの展覧会は、BankARTが目指している方向性の一つとも重なりました。
そして、いよいよ本題の魅力ある展覧会についてですが、実は作品の展示場所、方法は作家自身に決めてもらい、BankARTは基本的にそのお手伝いをしただけとのことでした。しかし、その“お手伝い”が結構大変で、特異な空間ならではの素敵な演出ができる分、リスクも大きいようでした。二階からすぐ一階をのぞける、手すりの付いた幅の狭い廊下の壁面に展示された秋山由樹さんの作品(左画像)もその一つでしたが、努力の甲斐あり、なんとか展示できたとのことです。しかも、その狭い廊下で作品を見ることができるようにもしたため、鑑賞者は作品を臨場感たっぷりで見ることができた上、そこから一階に展示されていた作品やBankART全体をぐるりと見おろすことができるようになっていたので、新鮮で楽しかったのではないかと思われました。
また、その他の作家の細かい演出の注文にもBankARTは精一杯応えたそうです。例えば、照明一つをとっても手を抜いていません。宮本隆司さんの旧金庫室に展示した作品(左下画像)においては、その空間と作品が調和するよう照明をすべて取り替えたとのこと。そして、石内都(右下画像)さんの作品においても本来なら3本セットで順々についてる蛍光灯をすべて一本ずつにしたそうです。


一方、Bank ART1929 Yokohamaの内装は新しく綺麗ですが、こちらも地下から3階まで、そして 階段壁面などそれぞれの空間に合うような形で作品が展示されていました。
その一階にて「横濱モボ・モガを探せ! 」というプロジェクトによって集められた写真の展示も行われていました。このプロジェクトは1920年代から戦前まで横浜に数多くいたモボ(モダンボーイ)、モガ(モダンガール)を探すもので、2004年9月中旬からBankART1929の事業に関わってきた方や近隣の商店街にチラシを配りよびかけをはじめ、当時の写真を集め、将来的には一冊の写真集にする予定だそうです。しかし、このプロジェクトの真の目的は、未知の写真を手がかりに今現在の横浜を形成している人と街と出会い、新しいネットワークを築いていくことで、これからも活動は続きます。
また、今回の展覧会が成功した秘訣の一つとして、すべての額装をギャラリーパストレイズ
に担当してもらい、その分、出品作品の販売権をそちらに委譲し、BankARTの経費と手間を大きく軽減できたこともあげられるそうです。
以上のことは「横濱写真館」の裏事情のごく一部と言えるでしょうが、それだけでもこの企画展が、特異性の高い場所で個性が強い複数の作品を展示したにも関わらず、お互いの良さを引き出すよう、いかに工夫された展覧会だったかお分かり頂けたでしょうか。
そして、今後このような企画展が開催されたら是非見に行きたいと思われた方も多いかと思いますが、残念ながら、やはり企画展に関しては大きな経費と労力を要するので、運営のため全体活動の2割程度しかできないようです。しかし、その分、一般の方でも借りて利用することが可能なので、見るだけでなく、利用する側としても楽しむことができます。
取材全体を通して、作品とBankARTの特性を活かした魅力ある展覧会にするために、作家とBankARTが一丸となってその見せ方を試行錯誤し、普通なら諦めてしまう案でも実現させてしまった熱意と努力に何より感心してしまいました。
2005年1月より旧富士銀行から日本郵船の倉庫がBankARTの一棟になりますが、そちらはまた別の特徴があるので、その良さを最大限に生かした使い方をされるだろう、と今から確信と同時に心より楽しみにしております。
池田さん、お忙しいなか、ありがとうございました。
年中フルタイムでパワフルに動いている姿に脱帽です!(ドイ)


(左上画像がBankART 1929 Yokohamaで右上画像がBankART 1929 馬車道)
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「横濱写真館」
会期:2004年10月26日−11月10日
会場:BankART 1929
(BankART 1929 Yokohama+BankART 1929 馬車道)
出展作家:石内都、宮本隆司、小山穂太郎、田中サトシ、秋山由樹、笹岡啓子、安楽寺えみ、鈴木理策、山崎博、今井智己、北島敬三、綿谷修、楢橋朝子、蔵真墨、森日出夫、佐藤時啓、横湯久美、森山大道、市川美幸
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☆次回は、12月4日にBankARTで開催される多摩美術大学芸術学科建畠ゼミのシンポジウム「横浜国際会議2004-なぜ国際展か? -」についてのレポートの報告をしようと思います。こちらには、横浜トリエンナーレ2005のディレクターの磯崎新さんもいらっしゃるので、お楽しみに!
勿論、皆さんも参加できますので、興味のある方はコチラをご覧下さい。
by hamatori
| 2004-11-28 10:25
| BankARTの活動紹介

