ホイールも丸い。ピンホールカメラも丸い |
ブログでも数回ご紹介している、
スーパーピュア2005プレイベント「ホイールアートプロジェクト」展
(開催中〜2月12日まで)。
1月29日、寒波の来る前日。展覧会に関連して行われた、
ピンホールカメラのワークショップをはまことりスタッフ2名でのぞいてきました!
ピンホールカメラの原理体験をとおして、昔の生活や絵画の流れにまで、
話しは広がりました。
体験! ピンホールカメラ
■そもそもなんでピンホールカメラかっていうと
ひねくれものの私がまず疑問だったのは、「ホイールアートプロジェクト」展で、なぜピンホールカメラのワークショップなのか、というところ。車椅子のホイールカバーと写真に、どんな関係が? 答えは簡単。「だってピンホールで撮った写真て、丸いでしょ?」と、今回ワークショップを主催したNPO法人ザ・ダークルーム・インターナショナルの斎藤久夫さん。
前回の「スーパーピュア2001」では写真作品の展示はありませんでした。「写真作品もあっていいのでは?」とかねてから斎藤さんが提案。今回の「ホイールアートプロジェクト展」では、「ホイールも丸い、ピンホールも丸い」ということでワークショップをすることになったそうです。「ピンホールカメラは、誰でも使えるし、誰でも作れる。たとえ障害を持っていても、指一本動けば撮れるんです。簡単でおもしろいツールとして、とらえてもらえればいいですね」と斎藤さん。
■カメラの中に入り込める?
今回のワークショップで一番印象に残ったこと。それは、カメラの原理の体験でした。
直径150センチ程度の、四角い銀色の箱に入ります。まるで手品が始まりそう。この箱が、大きめのピンホールカメラということになります。箱の側面には一箇所、穴が。穴は初めはふさがっているので、扉を閉めると中はまっくら。本当に何も見えません。穴のふたが開くと、中にある紙に、外の景色が逆さまに写ります。かなり鮮明に写ったので、びっくり! 外の景色がリアルタイムでそのまま写るので、車とか歩いている人とか、動いているものは、どんどん画面を横切っていきます。写真というより映画を見ているよう。
この紙が、印画紙やフィルムだと、実際に写真がとれるわけですね。ピンホールカメラの中にすっぽり入り込んだような、不思議で楽しい気分でした。
■もとは絵を描くための道具だった!
私たちは、この原理にびっくりしたのですが、昔の日本ではこの現象は当たり前のことだったとか。というのも、昔は、家の雨戸が木でできていて、小さな穴が空いていることもよくあったそうです。その穴から、朝日などが差し込むと、障子紙に外の景色が同じ原理で写っていたのだとか。ワークショップは、年配の方から若者まで幅広く人気だそうですが、この原理には若者は驚き、年配の方は懐かしがる方が多いそうです。
昔は当たり前だった自然の現象が、今は目新しく感じる。時がたつにつれ、自然の理から離れてしまったようで、ちょっと寂しい気もしました。
さらに驚いたこと。「この原理は、もともとは写真を撮るための道具ではなくて、絵を描くために使われていたんですよ」(ダークルームスタッフ・近藤さん)とのお話。16世紀頃、キャンバスなどにこの原理で景色を写して、鉛筆などでなぞって絵を描いていたそうです。
「ホイールアートプロジェクト」展の主催者のひとり、東京画廊の山本豊津さんは「写真の誕生が、20世紀の絵画の方向性に、大きな影響を与えた」と言います。「それまで写実表現が重視されていた絵画は、写真の誕生により、写実の表現がそれほど必要ではなくなってきたんです。そこから、抽象画がスタートしたんですね。ただ事物をきれいに描きとっておしまい、ではなく、描き手の内部を掘り下げいく方向になっていったんです」……カメラって奥が深い!
この展覧会でのワークショップはもう終了してしまいましたが、今後もダークルーム主催のワークショップは行われる予定です。興味のある方は、ホームページなどでチェックを!
●NPO法人ザ・ダークルーム・インターナショナル
www.thedarkroom-int.com
●参加者の方の感想
なんと千葉県から、このワークショップのためにいらした女性(職業・会社員)に
感想を伺いました。
「おもしろかった! もともとピンホールカメラに興味があって、ネットで検索して申込んで参加しました。カメラの中身みたいな部屋では、原理を体験して理解できておもしろかったです」
原理の体験と、もちろんピンホールカメラで撮影もされたそうです。
神奈川在住のお友達と、横浜観光をして帰られるとのことでした!
ホイールアートプロジェクト、会期終了間近です!
■ネガティブをポジティブに
2月12日で終了してしまう、「ホイールアートプロジェクト」展。まだ観ていなかった私は、こちらも拝見してきました。
「スーパーピュア」の、障害者のアート作品を展示する活動と、JOINTの「ホイールカバー」をデザインする活動とがなぜマッチングしたのでしょうか? 主催者のひとりである、東京画廊の山本さんに伺ってみました。
「車椅子って、基本的にマイナーな世界なんですよね。障害のためにあるため、マイナスイメージを浮かべやすい。でも、メガネってあるでしょ。メガネは今でこそおしゃれの道具になってるけど、元々は目の不自由さ=障害のためのものだった。そのメガネがおしゃれだったら、障害よりも、メガネそのものの素敵さに目がいきますよね。車椅子のホイールをアートできれいにすることで、ネガティブなイメージをポジティブなものに変えていきたいんです。『メガネをかけてみたい』と思うように、『車椅子に乗ってみたい』と思う。そこまで人々の意識をもっていきたいですね」
絵を描くということは、言葉を持つ以前からあった、人間の自然な行為。「アートをもっとフリーに考えて、自分を知る手がかりにしよう」が「スーパーピュア2005」のテーマだそうです。その一旦に触れられる、「ホイールアートプロジェクト」展。
ぜひぜひのぞいてみてください!(ばななわに)
●「ホイールアートプロジェクト」展
【会期】2005年1月21日(金)〜2月12日(土)
【時間】11:00〜18:00(ただし、日曜・祝日は休廊)
【会場】ヨコハマポートサイドギャラリー
【住所】神奈川区栄町5-1 横浜クリエーションスクエア1階
【TEL&FAX】045-461-3033
【E-mail】infomation@ycs-ap.com